光を見ている

まるっと愛でる

20230504

笑の大学

 もう観劇から1ヶ月になりそうなのが怖い。時間早すぎ。交通費が電車賃しかかからない現場、久しぶりすぎてめちゃありがたかったです...

 

 まずええか?前の席の人、身を前後左右に乗り出しまくってて、頭が超超超邪魔だった。ずーっと私も体をひねりながら見てたわ!疲れた!会場の問題で聞こえにくいとか見えにくいとかより100倍ストレス!!!!!!!幕間に言おうと思ったら幕間なかった!!!劇場マナーというか利己的な感情として見にくいのちょー嫌で、席的にもたぶんS席ではないポジションの人だったから、地方に来たしせっかくだから行ってみるか的な感じで観劇したんだろうなーと思うと仕方ねえのかもしれない。東京の劇場に行く人はおそらく多くが「わざわざ東京まで見に行っている」人だろうから、必然的に「劇場マナー(「」つきの意図を込めてるよ)も知ってる人が増えるんだよね。そういう点では「わざわざ見に行く」の距離感で行く方がいいのかもしれません。作品を見るのも好きだけど、劇場の空気を浴びることも好きだし、あと移動することも好きなので。物理的に移動することで気持ちの切り替えにもなるし。

 で、こんだけ愚痴ってるけど地方でやるから軽いノリで観に行こう、のノリはめっちゃ大事なんだよねえ...そうやって観劇体験って始まって根付いていくものじゃん。だからせめてスタッフさんは注意してくれ...博多座の動画を全劇場で流してくれ...映画泥棒みたいに...

 

 

 内容は戦時下におけるエンタメの話で、劇作家と検閲官のやり取りで最後まで進んでいくんだけど、検閲に負けず笑いを盛り込んだ作品を作る劇作家と、笑いがわからない真面目な堅物ゆえに面白い話を生み出す検閲官のやりとり、という皮を被っているけど、その裏や奥には戦争を皮肉る内容を検閲官にぶつける思いってどんなものなんだろうとか、果たして向坂は椿の作品を笑い、楽しむことは許されているのだろうかとか、そういうのがあるから笑えないシーンも多くてしんどかった。バカバカしい笑いが生まれるシーンに明確に戦争の影響が響いている様が描かれたりして、でもそこは笑いどころのシーンで観客も笑いで応答して、ということが何度かあって、私は笑ったり笑えなかったりで、笑う自分が愚かだなと思ったし笑ってる周りの観客の素朴さというか戦争を無視した笑いの無邪気さに怖くなったりした。実際今の日本が10年前、20年前より戦争に近づいている感じがして、全然遠い話に思えなかったんだよね...

 また、実際の太平洋戦争下の検閲では向坂のように、召集令状が届いた若者に「死ぬな」なんて言えなかったと思うし、「死ぬのはお肉のためだけでいいんだ」が思いっきりブーメランしてしかも残酷さを増してるし(「お肉のために死ぬ」は向坂が気に入ってたギャグだけど、椿が本当にお国のための死ななくてはならなくなって、くだらないと笑ったもののために死ななくてはならなくなった椿、という)、言葉を選ばずに言うと市民に死ぬことを要請する立場である向坂が、椿の脚本を受け取って笑うシーン(その笑いには悲しみとか後悔とか苦しみがこもっていたし、向坂もまた組織の末端という権力の中でも弱い、ヨゴレ的な立場ではあるんだけど)は正直都合良すぎないか?と思った。でもそれができるのが演劇なんだよね。それを美談として受け取らなくてはならないとは描いていなかったと思う。最後椿が去り、一人で脚本を読みながら笑う向坂が暗転して消えた、と思ったらふっと照明が付き、そこには椿がいて、というシーンで終わったんだけど、あの椿は向坂の言った通り死なないで帰ってきた姿なのか、それとも向坂の願いなのか、分からないけど、それができるのが舞台で。願いを抱くことを許してくれるからカタルシス...になって見るんだよねえ...私が政治について一歩踏み込んで知ろうと思ったきっかけが映画「主戦場」だったんだけど、作品から政治につながる方法を辿ってきた人間だからこそこういう作品を諦めたくないと改めて思った。はだしのゲンとかもうすでに規制はもうすでに始まっているのが辛いし恐ろしいんだけど、それに気づくことからやってかないと...回帰不能点という言葉がちらつくのがすごい怖いのだが...現政権ぶっ倒さないとの精神が強くなった。

 

ミュージカル「マチルダ

 名前だけは知ってた作品なのだけど、改めて観劇したら超面白かった。思ってた以上にまっすぐなガールズ・ライオットの話で、「Naughty」にも「そう悪い子になるの少し」とあるようにフェミニズム的にも読める話ということを知れて嬉しかった(いい女の子は天国へ行ける、わるい女の子はどこへでも行けるというメイ・ウエストの言葉がある。マチルダが本が好きというのも勝手にベル・フックス~になったりして、そういう少女の可能性を見れるのは、この作品を見る女の子にとても勇気を与えるんじゃないかなと思う。

 ハニー先生にとってマチルダは過去の自分、マチルダにとってハニー先生は(マチルダがトランチブル先生を倒さなかった場合の)未来の自分でもあって、そのふたりが同じ意志のもと手を取り合って、ハニー先生はマチルダに寄り添って愛して、マチルダはハニー先生の行く先を照らすように革命を起こして、最後ふたりで手を取り合い世代を超えた連帯をする、という力強い話だった。これはマチルダを英雄として扱う話ではなく、マチルダがした革命の話だと思うから、マチルダが男の子だったら成立しないよななんて思ったりしました。

 この作品の肝は「子ども(という弱い立場の者)であろうと正しくないことに怒っていいし、最低な保護者にとってのいい子である必要はない、そこから追い出していい」だと思うのだけど、苦しむし辛い思いもするけれど、それらの矛先を自分に向けるのではなく敵をきちんと見つめているという描き方が真っ当すぎて…自己責任論に回収されなくて本当に良かった。マチルダの超能力も怒りのパワーで発動したものだと解釈しているので、怒りが形を変えることなく描かれていてとても好きでした。嘉村咲良さんが主演の回を観劇したのだけれど、嘉村さんのマチルダはすごく怒っているマチルダだなと感じて、そこがすごく好きでした。そもそもマチルダは全然笑わない(笑うような場面が多くないので)のだけど、真剣に演じているからというだけじゃなく、表情でああ今マチルダめちゃくちゃ怒っているんだと気付くことが何度かあって、純粋にすごいなと思いました。

 大人になってからのこの作品の見え方としては、いい作品だったと言うのと同じパワーで「子どもにそんなことをさせるな、子どもがたったひとりで背負う必要のない苦悩を背負わせるな、大人の責任を果たせ!!!」になって、なんかすごい申し訳なくなってしまった…マチルダに大人を励ます役をさせてしまって申し訳ない。正しくないことが起こりまくるヘルジャパンに生きるたくさんのマチルダのためにゥチも頑張らなければ…

 

THE MUSIC MAN

 パンフレットのヒル教授がぜ~~~んぶかわいい!!!!!!特にSTORYのとこのウインク教授!!!

 1曲目のロック・アイランドの掛け合いが楽しすぎて、あと白スーツの坂本さんのウエストが細すぎて最初からもうびっくりしたし、アホみたいな感想だけど坂本さんを見るたび好きになっていくな…としみじみしてしまった。とにかく音楽を楽しむ作品だったね~話としては分かりやすくシンプルだからこそ、音楽でこんなに幅が広く豊かになっていくのよ。生オケとキャストの生歌を楽しむぜいたくな空間、こういうハレの日がないとダメ。人生にはショータイムが必要。マジで。カルテットの皆様のアイスクリームとミセススクワイヤーズのコソコソヒソヒソの掛け合いが一番好きだった。あと2幕のハロルド坂本さん、ハロルドの正体がばれてるとマリアンから明かされた橋のシーン、どっちがプリンセスだよ!!と言いたくなって、やっぱ細かい所作がプリンセスなんだよな…スタアでプリンセス、稀有すぎる逸材。マーチングバンドでどうしてもガコイコの坂長がちらついたのはここだけの話です

 何だかんだでいろんなジャンルの作品を見てきてるなと思えるくらいに感激してると思うのだけど、今回で自分の好みが何となくわかったかもしれない。私は推しが出ていることも大事だけど、それと同じくらい演目が自分の関心に寄っていることで「満足、面白かった」になるのだと思う。たとえば今回のミュージックマンは明るい話で好きだったけど、私にとってはマチルダの方が自分事として引き寄せやすかった分入り込むことができたのかも。作品を通して自分は何をどう感じたかというのが私にとっては必要で、そういう点で「THE BOY FROM OZ」が本当に好きなのだなと気づきました。好きな人が、私のためと思えるクィアなエンパワメントをしている作品、そう言うものに出会えてよかったなと思う。今回OZに出演経験のあるキャストが坂本さん含め3人いるのかな?ハッピーでした。特に小暮航ノ介さん、カテコで坂本さんと一緒に出てきたとき、明らかに去年より身長差が少なくなっててよそのお子さんの成長は早いな…になったし、ピーターが時を超えてまた並んで同じステージで歌い踊ることができた…と勝手にエモくなっていました。

 

 

 ギャッと観劇の感想をまとめた。5月は今のところ観劇の予定がないので、精神がおしまいになる前に何か見つけて見れたらいいなと思うし、それが無理なら在住地で遊べるところを開拓したいし、あといい加減メガネを変えたい。レンズに傷がつきまくってるのに一向に割れない丈夫なメガネ、めちゃくちゃ愛着があるけどそろそろ変えないと...


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