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【番外編】ドラマ「みなと商事コインランドリー」の柊くんをクィアリーディングする・参考文献&サイト集

signko.hatenablog.com

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 私の「人生」ドラマこと「みなと商事コインランドリー」クィアリーディングし、柊くんをAロマンティックパーソンとして物語を読み解いていく……というのをやってきました。私にとってこの作品は、Aロマンティックを生きていく上で指針にも、お守りにもなりうる大切な作品なのですが、それが自分以外にどのくらい・どのように伝わっているのか、クィアリーディングを通さずに見た柊くんのAロマンティシズムがどのくらい伝わっているのか、正直よくわかっていません。
 私はこの作品と柊くんを通してAロマンティックと出会う人が少しでも増えることを願っていますし、この作品はフィクションと現実社会を接続させる可能性を十分に備えていると信じています。だからこそ完全に趣味なのにトータル30000字近くもかけて思いを書き殴ってきたんですけど……ということで、今回はドラマ「みなと商事コインランドリー」が炙り出してきた規範をより理解しやすくなる(かもしれない)文献やサイトを紹介し、柊くんのAロマンティシズムを読み取りやすくするためのガイド的なものを作ろうと思います。紹介するサイトや文献は全て「私はいいと思う」という基準で選んだものですので、全ての人に必ず有益になるものではないです(でも、あらゆる人に関わる内容なのは間違いないです)。柊くんに寄り添い、Aロマンティシズムに接近する方法のひとつとしてご活用ください。では!



Aロマンティックって何?】

acearobu.comnote.com

 

www.akashi.co.jp

asexuality.org

 

 あくまで私個人の体感として、ここ数年で「Aセクシュアル」「Aロマンティック」の知名度は格段に上がったように思います。知名度が上がり、情報にアクセスしやすくなることは、自分のアイデンティティに悩み不安や居心地の悪さを抱える人が、少しでも楽に生きていくことができる道が増えることにつながる、間違いなくいい方向への変化です。しかし、増えたと言っても正直豊富・充分と言えるほどにはなく、日本語で読める情報となるとその数はさらに少なくなります。ということで、まずAロマンティックとは何か理解したいと思ったとき、一番最初に触れるのをおすすめするのが上記2つのサイトです。アクセスのしやすさで考えればインターネットにあるものがやっぱり強いので……
 そして情報がまとめられた本を読んでみたい方には、まず「アセクシュアルのすべて」をおすすめします。初版は2019年発行で、日本語で読める、かつ比較的わかりやすい書籍ならまずはこれかなと思います。タイトルは「アセクシュアル」ですが、Aロマンティックについても触れられており、スペクトラムの概念、A~Alloの間にある曖昧で区分しづらい・できないエリアの説明、よくある誤解とそれへの答え(抵抗)などが盛り込まれた、とてもエンパワメントされる1冊です。
 最後のサイトは、「AVEN」の略称で知られる世界最大のAセクシュアルのコミュニティサイトです。基本的な知識を得るだけでなく、2001年に開設されてから当事者たちがそこに存在していたのだと感じられること自体が、私にとってとても励まされるサイトです。

 

【「今まで好きとか嫌いと考えたことないし、付き合うとかよくわからない」】

acearobu.com

 

 柊くんのセリフを引用しましたが、こういった文言はキャラクターのAロマンティシズムを視聴者に気づかせるためのきっかけとして、実は結構よく見られるパターンです。逆に言えば、こういうセリフを見逃さず追いかけた先で、Aロマンティックに出会える可能性が待ち受けていることは少なくないのです。ということで、それらがわからない・し(たく)ないことは何もおかしいことではないこと、そしてなぜそれらは「おかしい」とされてしまうのかを知っていくきっかけとして、こちらのページがおすすめです。

 

 

【人は必ず、誰もが他者を(恋愛的に)好きになる」という規範─恋愛伴侶規範:amatonormativity】

hakutakusha.co.jp

elizabethbrake.com

note.com

 

 私のブログにめっちゃ登場する「恋愛伴侶規範」。多くの方には聴き馴染みがない言葉だと思いますが、Aロマンティックを理解しようとするときに避けては通れない概念だと思っています。Amatonormativityを提唱したのがエリザベス・ブレイクという哲学者で、氏が書いたのが『最小の結婚』という本です。その中でAmatonormativityは「性愛規範性」と訳されているのですが、現在では「恋愛伴侶規範」の訳で理解され、扱われることの方が多いです。(その経緯や文脈については、下記のブログ記事を読むとわかりやすいかと思います)

 

 

【明日香は俺のねこだから─恋人でも友人でもない「重要な他者」として】

www.seidosha.co.jp

researchmap.jp

 

 明日香と柊くんの関係性は「ねこ」という言葉を借りて表現されてきましたが、「恋人」や「友人」といった代表的な人間関係のカテゴリ「ではない」もので関係性を定義づける意図について、こちらの文章を引用しながら読み解いてきました。人間関係のなかで「恋愛(関係)」が最も価値あるものである、という社会モデルに抵抗する営みとその方法について説明されています。

 

 

「自分の愛は無力である─恋愛伴侶規範が阻害し、取りこぼすもの】

note.com

sayusha.com

note.com

 

 3本通して一番熱量を割いたと思っているのが「ふたりの関係において、恋愛伴侶規範がなぜ・どのように思いを伝えることを難しくさせてきたのか」なのですが、物語の中ではときに当たり前すぎで問題にされてこなかった恋愛伴侶規範の有害さについて説明されているのがこちらです。アンジェラ・チェン氏の『ACE』はタイトル通りAセクシュアルに関することがメインではありますが、第7章「恋愛再考」はAロマンティックについての内容なので、まずは興味がある部分から...みたいに読んでいくといいかもしれないです。

 

【「不幸な退出問題」】

sisterleemag.medium.com

 

 「不幸な退出問題=既存の規範を脅かすことのない範囲内で、物語に起伏をつけるためだけにマイノリティ集団が登場させられ、その集団がマイノリティとされる根拠の(有害な)社会規範は温存されたまま、あるいはその問題点は指摘されることのないまま進行し、経験する傷つきや苦しみは単に『悲哀』に矮小化され、そして中心に存在する登場人物(そのほとんどが社会的マジョリティである)の豊かな経験として吸収され、いつの間にか物語から去って行く表象の有害さ」自体は私が勝手に言っている文言なのですが、これに近い概念はやはりある程度共有されているんだなと思います。引用した記事内でもその被害に遭っているのがAロマンティックと読めるキャラクターであるというのを鑑みると、特にこれはAロマに起こりやすい問題なんだなと、いい気分はしないですね…なぜそれが有害なのか、Aロマを登場させるときに気を付けるべきポイントなどがまとめられている、とてもセーファーで誠実な文章だと思います。Aロマ表象に何となく傷ついた人にぜひ読んでほしい記事です。

 

【「明日香のことがとっても大切だよ」】

acearobu.com

www.diamond.co.jp

 

 「好き」が恋愛的な文脈に帰結させられてしまうからこそ、柊くんは「大切」という言葉を選んだのだと読んできました。では「恋愛的な文脈ではない好き」とはどんなものがあるのか?「好き」にはどんな種類があるのか?という観点から考えるとき、こちらのページや文献をおすすめします。「恋愛的な好き」自体が悪なのではなく、「好き」を恋愛的─それは異性愛的であり、恋愛伴侶規範に沿ったものであるべきという制約付き─な単一の型に押し込めることが問題なので、その制約を外していくことで私たちは「好き」をもっと自由に扱えるようになっていくはずです。その方法の一つとして、「惹かれ」の種類スペクトラムの概念(白黒や0-100ではない、それらの間には曖昧で多様な空間があるということ)が説明されているこちらのページや文献をおすすめします。

 

 

 

 あくまで自分用のまとめなので当初はブログにするつもりはなかったのですが、せっかくのプライドマンスですし、フィクションとクィアに生きている・生きたい誰かの現実をつなげる足掛かりになればいいなという気持ちです。私たちのための物語はいくらあってもいいですし、私たちのための物語にしていくやり方だっていくらあってもいいはずですからね......